一 平成27年度税制改正の経緯
平成27年度税制改正については、昨年12月30日 に与党において「平成27年度税制改正大綱」が取 りまとめられました。続いて、本年 1 月14日には 「平成27年度税制改正の大綱」が閣議決定されま した。その後、この大綱に基づいて作成された
「所得税法等の一部を改正する法律案」が 2 月17 日に国会に提出され、国会における審議の結果、
3 月31日に成立し、同日に公布されました。 本稿においては、平成27年度税制改正の概要 (国税部分)を説明します。
二 平成27年度税制改正の基本的考え方
平成27年度税制改正においては、現下の経済情 勢等を踏まえ、デフレ脱却・経済再生に向けた税 制措置、地方創生に係る税制措置、消費税率10% への引上げ時期の変更、BEPSプロジェクト等の 国際的取組を踏まえた税制措置等を講ずることと しました。
具体的には、成長志向に重点を置いた法人税改 革として、課税ベースを拡大して税率を引き下げ ることで、企業が収益力を高め、賃上げに積極的
に取り組むよう促すこととしたほか、消費税につ いては、税率10%への引上げ時期を平成29年 4 月 とすること等とし、さらに、住宅取得等資金に係 る贈与税の非課税制度の延長・拡充や地方拠点強 化税制の創設等を行うこととしました。
これらの改正により、平年度で1,080億円の減収、 平成27年度においては1,230億円の減収となるこ とが見込まれます((参考)参照)。
目 次 一 平成27年度税制改正の経緯������ 3
二 平成27年度税制改正の基本的考え方�� 3
(参考)
平成27年度の税制改正(内国税関係)による増減収見込額
(単位:億円)
改 正 事 項 平年度 初年度
1 .法人課税
⑴法人税率の引下げ ▲ 6,690 ▲ 4,570
⑵所得拡大促進税制の拡充 ▲ 340
-⑶研究開発税制(総額型)の特別試験研究費控除の拡充 ▲ 300 ▲ 230 ⑷欠損金の繰越控除制度の見直し 3,970 1,630
(1,920)
⑸受取配当等の益金不算入制度の見直し 920 710
⑹租税特別措置の見直し 1,790 1,410
⑺地方拠点強化税制の創設 ▲ 100 ▲ 20
法人課税 計 ▲ 750 ▲ 1,070
2 .個人所得課税
⑴ジュニアNISA(仮称)の創設 ▲ 150
-⑵NISAの年間投資上限額の引上げ ▲ 50 0
⑶確定拠出年金制度の拡充 ▲ 20
-個人所得課税 計 ▲ 220 0
3 .消費課税
⑴自動車重量税のエコカー減税の対象範囲の見直し ▲ 190 ▲ 170 ⑵国境を越えた役務の提供に対する消費税の課税の見直し 70 10 ⑶旧 3 級品の紙巻たばこに係るたばこ税の特例税率の廃止 10
-消費課税 計 ▲ 110 ▲ 160
合 計 ▲ 1,080 ▲ 1,230 (注 1 ) 上記の計数は10億円未満を四捨五入している。
(注 2 ) 「 1 .⑷欠損金の繰越控除制度の見直し」の平年度の増収見込額は平成29年 4 月 1 日以降に開始する事 業年度より適用される改正の増収見込額であり、カッコ書きは平成27年 4 月 1 日~平成29年 3 月31日に 開始する事業年度に適用される改正の増収見込額である。
(注 3 ) 「 1 .⑹租税特別措置の見直し」は、研究開発税制の見直し(平年度1,140億円、初年度910億円)、生産 等設備投資促進税制の廃止(平年度330億円、初年度250億円)、太陽光発電設備の即時償却の廃止(平年 度190億円、初年度140億円)及び特定資産の買換え等の場合の課税の特例の見直し(平年度130億円、初 年度110億円)であり、この中には、損益計上時期の変化に伴う一時的な増収も含まれる。
(注 4 ) 「 3 .⑴自動車重量税のエコカー減税の対象範囲の見直し」欄の計数は、2020年度燃費基準への置換え に伴い見込まれる税収からの減収額。上記のほか、特別会計分の減収見込額は、平年度▲130億円、初年 度▲117億円と見込まれる。
三 平成27年度税制改正の概要
1 デフレ脱却・経済再生に向けた税制措
置
⑴ 成長志向に重点を置いた法人税改革
平成27年度税制改正から着手する法人税改革 は、「課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げ る」ことにより、法人課税を成長志向型の構造 に変えることを目的としており、より広く負担 を分かち合い、「稼ぐ力」のある企業等の税負 担を軽減することで、企業の収益力を向上させ る取組みを後押しするものです。
改革を通じて、企業の収益力改善に向けた投 資や新たな技術開発等への挑戦がより積極的に なり、それが成長につながっていくと考えられ ます。また、企業が収益力を高めれば、継続的 な賃上げが可能な体質となり、より積極的な賃 上げへの取組みが可能となると考えられます。 なお、地域経済を支える中小法人への影響に配 慮して、平成27年度は大法人を中心に改革を行 うこととしています。
具体的には、平成27年度税制改正では、 ・ 欠損金繰越控除の見直し、受取配当等益金
不算入の見直し、法人事業税の外形標準課税 の拡大、租税特別措置の見直しにより、財源 を確保しつつ、
・ 国の法人税の税率引下げと、地方の法人事 業税所得割の税率引下げを行い、
・ 平成27、28年度は、経済の好循環の実現を 力強く後押しするために法人税率の引下げを 先行させることとし、
国・地方を通じた法人実効税率(現行34.62%) について、平成27年度▲2.51%・平成28年度▲ 3.29%の引下げを行うこととしました。 なお、与党税制改正大綱においては、平成28
年度税制改正では、課税ベースの拡大等により 財源を確保して、平成28年度における税率引下 げ幅の更なる上乗せを図ることとされており (▲3.29%+α)、その後の年度の改正において も、数年で法人実効税率を20%台まで引き下げ ることを目指して改革を継続することとされて います。
また、上記の措置に加え、平成27年度税制改 正では、所得拡大促進税制の拡充などを講じる ことにより賃上げの取組みを後押しすることと しました(給与等支給額の増加要件について、 毎年度 1 %ずつ上乗せする形へと要件を緩和。 さらに、中小法人については、平成27~29年度 の増加要件を一定とし賃上げへのインセンティ ブを高める)。
⑵ 住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置の 延長・拡充
足元の住宅市場活性化策及び消費税率10%へ の引上げ(平成29年 4 月)に伴う駆け込み及び 反動減対策の観点から、住宅取得等資金に係る 贈与税の非課税措置の適用期限を延長した上で 拡充することとしました。具体的には、適用期 限は平成31年 6 月末まで延長し、非課税枠は、 現行の最大1,000万円から最大3,000万円にまで 拡充することとしました。
⑶ NISAの拡充
また、現行NISAについても、投資上限額を 引き上げることとしました(年間100万円⇒120 万円)。
2 地方創生
⑴ 地方拠点強化税制の創設
地域再生法の新たな枠組みの下、企業の本社 機能等に関し、東京圏から地方への移転、又は 地方における拡充の取組みを支援するため、税 制措置を創設することとしました。
具体的には、たとえば、東京23区からの移転 の場合、①本社等の建物に係る投資減税(特別 償却25%or 税額控除 7 %(計画認定が平成 27・28年 度 の 場 合。 平 成29年 度 の 場 合 は 4 %。))を講じることとし、②雇用促進税制の特 例(地方拠点の増加雇用者数 1 人当たり最大80 万円の税額控除(最大の場合、 3 年間合計で 140万円))を適用することとしました。 (注) 地域再生法においては、各企業は、一定の
区域における本社機能等の強化について、必 要な投資や雇用増を盛り込んだ計画を作成し、 都道府県の認定を受けることができるとされ ました。
⑵ 外国人旅行者向け消費税免税制度の拡充 消費税免税店の拡大及び利便性向上を図る観 点から、商店街やショッピングモール内などに おける消費税の免税手続きを、「免税手続きカ ウンター」でまとめて行えるようにすることと しました。
⑶ 結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の 非課税措置の創設
祖父母や両親の資産を一括贈与により早期に 移転することを通じて、若年層の経済的不安を 解消し、子や孫の結婚・出産・育児を後押しす るため、これらに要する資金の一括贈与に係る
非課税措置を創設(非課税枠:1,000万円)す ることとしました。
3 消費税率引上げ時期の変更等
⑴ 消費税率10%への引上げ時期の変更
経済再生と財政健全化を両立するため、平成 27年10月に予定していた消費税率10%への引上 げ時期を平成29年 4 月とすることとしました。
⑵ 景気判断条項(税制抜本改革法附則18条 3 項)の削除
社会保障制度を次世代に引き渡す責任を果た すとともに、市場や国際社会からの信認を高め るために財政健全化を着実に進める姿勢を示す 観点から、平成29年 4 月の消費税率10%への引 上げは、「景気判断条項」を付さずに確実に実 施することとしました。
⑶ 住宅ローン減税等の適用期限の変更
消費税率引上げによる住宅投資への影響の平 準化・緩和策である住宅ローン減税等の措置に ついては、平成29年末までの適用期限とされて いましたが、消費税率10%への引上げ時期の変 更を踏まえ、その適用期限を 1 年 6 ヶ月延長す ることとしました。
4 国際課税関連
G20・OECDが 推 進 し て い る「BEPS(Base ErosionandProitShifting:税源浸食と利益移 転)プロジェクト」等の取組みの趣旨を踏まえ、 クロスボーダーの取引や人の動きに係る課税の適 正化に向けて取り組むこととしました。
⑴ 国境を越えた役務の提供に対する消費税の課 税の見直し
電子書籍・音楽・広告の配信等の電子商取引を 消費税の課税対象とすることとしました。
⑵ 外国子会社配当益金不算入制度の適正化 外国子会社配当益金不算入制度とは、国際的 な二重課税を排除するため、外国子会社から日 本の親会社に支払われる配当(外国において法 人税が課された後の利益から支払われる)につ いては、親会社の益金に算入せず、課税しない 制度です。この制度について、国際的な二重非 課税を防止する観点から、外国子会社において 損金に算入される配当を制度の適用対象から除 外することとしました。
⑶ 国外転出をした場合の譲渡所得等の特例の創 設
租税条約上、株式等のキャピタルゲインにつ いては株式等を売却した者が居住している国に 課税権があるとされています。これを利用し、 巨額の含み益を有する株式を保有したまま出国 し、キャピタルゲイン非課税国において売却す ることにより、課税逃れを行うことが可能とな っています。
そこで、このようなクロスボーダーでの課税 逃れを防止する観点から、巨額の含み益を有す る株式等を保有して出国する者に対する譲渡所 得課税の特例を創設することとしました(出国 時の有価証券等の評価額が 1 億円以上の者であ り、かつ、原則として、出国直近10年内におい て 5 年を超えて居住者であった者が対象)。 また、これにあわせて、現行の財産債務明細 書について、所得税・相続税の申告の適正性を 担保するため、事務負担にも配慮しつつ、記載 内容を充実するなどの見直しを行うこととしま した。
⑷ 非居住者に係る金融口座情報の自動的交換制 度の整備
G20サミット等において、外国の金融機関の 口座を通じた国際的な脱税及び租税回避に対処 する観点から、非居住者の金融口座情報を各国 税務当局と自動的に交換することが合意された ことを踏まえ、金融機関に対し非居住者の金融 口座情報の報告を求める制度を整備することと しました。
5 復興支援のための税制措置
福島の避難解除区域等に帰還して事業を再開し ようとする事業者を対象に、投資費用を積み立て やすくするための準備金制度を創設するなど、引 き続き東日本大震災からの復興を支援するための 税制措置を講ずることとしました。
6 その他
⑴ 自動車重量税の見直し
エコカー減税について、燃費基準の移行を円 滑に進めるとともに、足下の自動車の消費を喚 起することにも配慮し、 2 年間の経過的な措置 として、平成32年度燃費基準への単純な置き換 えを行うとともに、現行の平成27年度燃費基準 によるエコカー減税対象車の一部を、引き続き 減税対象とする等の措置を講ずることとしまし た。
⑵ たばこ税の見直し
した。
⑶ 円滑・適正な納税のための環境整備
① 国外居住親族に係る扶養控除等の書類の添 付等義務化